Tether(テザー)入門 —Bitcoinファンダメンタル分析としてのUSDT
「なんかテザー?っていうのがビットコインの分析で大事っぽい?」というような話を聞いたことがあるようなたぬきもいると思うたぬ。
トレーダーによって評価はまちまちかもしれんたぬけど、環はテザーの動向を非常に重視しているたぬ。
テザーを考慮するのとしないのとじゃ全然違うたぬ。というかぶっちゃけテザーに注目してからめきめき勝てるようになったぬき。BTCのファンダメンタル分析において最も重要といっても過言じゃないかもしれんたぬ。
そんな超重要なテザーについて、ぜひとも知っときたい基本を今回はお話したいたぬ。
以下、Tetherについて、いつものようにに公式ページとかを見ながらお話するたぬ。引用分中の強調や色付けは引用者によるたぬ。
Tether(テザー)とは?なにかな〜
Tether(テザー・USDT)とはTether Limited(テザー社)が発行しているステーブルコイン(価格が一定に保たれるように調整されているコイン)たぬ。米ドルにペッグ(為替レート固定)されていて、基本的には1USDT=1USDになるようにされているたぬ。
1USDT=1USDになるようにしている仕組みはカレンシーボード制だとされていて、要するにテザー発行額分の米ドルを保有することで、テザーの価値を維持しているとされているたぬ。
下の引用より、tetherって名前はそうやって法定通貨と「繋がれている」ことからきているみたいたぬ。「テザリング」のテザーたぬね。
Tether FAQs https://tether.to/faqs/
How does Tether protect me from cryptocurrency volatility?
Because they are anchored or ‘tethered’ to real-world currencies on a 1-to-1 basis and backed by our reserves.
・・・けれども後述のように実際のテザー社は保有する米ドル以上のテザーを発行していたことが明らかになっているたぬ。
テザーのコンプラアインス問題
テザー社やその関連会社はコンプライアンス上非常に問題があるたぬ。
コンプライアンス上の問題っていうとピンとこないかもしれんたぬ。要するに法的にヤバイって意味たぬ。
いわゆるテザー問題(テザー疑惑)
ここでは概要だけ簡単にお話するたぬ。
この一連の疑惑を発端に、テザーの問題が次々と明るみに出ていくたぬ。
まず、関係する4社を挙げておくたぬ。
Tether社とBitfinexは共にiFinexという会社の子会社たぬ。(似た名前のFX業者とは別物)
さらに、Crypto Capitalという会社がiFinexからの出資を受けていたぬき。
この4つの会社を巡って、いろんな事件が展開して裁判沙汰になったぬき。
さて、あるときiFinexの資金提供先であるCrypto Capitalが9億ドル近い損失をだしたぬき。
それに対し、iFinexの子会社であるBitfinexが損失補填のため、Tether社の発行するテザー(USDT)を使用したぬき。
すると2018年10月、Bitfinexが顧客の引き出しリクエストに対応できないという事態が起こったぬき。
そうなると、「・・・これってUSDTの準備金として十分な米ドルを持ってないからリクエストに応じられないってことじゃねーのか?」という噂が広がったみたいたぬ。
産経新聞 https://www.sankei.com/wired/news/180202/wir1802020001-n1.html
ところがこの数週間、懐疑論者たちがTetherのほぼすべての側面に一斉に疑問を投げかけている。その疑惑とは、流通するTetherの総額が、運営会社(通貨と同名のテザー)が保有する米ドルの総額と本当に合致するのか--という点だ。
・・・残念ながら、これは噂だけにとどまらなかったぬき。
まず2019年4月にニューヨーク州司法長官がBitfinexとiFinexを訴えるたぬ。
その内容は司法長官の公式ページから確認できるたぬ。
Our investigation has determined that the operators of the ‘Bitfinex’ trading platform, who also control the ‘tether’ virtual currency, have engaged in a cover-up to hide the apparent loss of $850 million dollars of co-mingled client and corporate funds,” said Attorney General James.
たぬき訳「BitfinexとTetherの事業主(経営者)が、顧客の金と会社の資金とをごちゃ混ぜにしたところから8億5千ドルの損失を隠蔽しよった」
するとなんと翌5月、Tether社は発行したテザーの約4分の3しか準備金を保有していないことを認めたぬき。
Coindesk https://www.coindesk.com/tether-lawyer-confirms-stablecoin-74-percent-backed-by-cash-and-equivalents
The USDT stablecoin is only about 74 percent backed by fiat equivalents as of April 30, says its issuer’s general counsel.
たぬき訳「顧問弁護士によると74%分しか準備金ないってさ」
顧問弁護士(general counsel)がそういっちゃたわけたぬ。
ヒィヒィ〜たぬ。つまり特に準備金で保証されてもないのに自称1USD分の価値ということでテザーをガンガン刷ってたらしいってことたぬ。
テザー問題、その後どうなった?
Cointelegraph https://cointelegraph.com/news/bitfinex-can-hold-on-to-documents-about-alleged-850-million-cover-up
Bitfinex can hold on to documents pertaining to the alleged cover-up of an $850 million loss on its trading platform, the Appellate Division of the New York Supreme Court has ruled.
まず、9月末の時点でビットフィネックスは例の8億5000ドルに関する財務書類の提出は保留になっているたぬ。
Crypto Capital 社長逮捕
他方で10月末、一連の疑惑の発端になったCrypto Capital の社長が逮捕されたぬき。
Cointelegraph https://cointelegraph.com/news/head-of-crypto-capital-arrested-in-connection-with-money-laundering
Ivan Manuel Molina Lee, the president of controversial Panama-based payments processor Crypto Capital tied to Bitfinex and other major cryptocurrency exchanges, was arrested by Polish authorities.
たぬき訳「クリプトキャピタルの社長が逮捕された」
これを受けてBitfinexはなんと「自分たちは詐欺の被害者だ!」という声明を発表したぬき。
Bitfinex https://www.bitfinex.com/posts/426
Bitfinex is the victim of a fraud and is making its position clear to the relevant authorities, including those in Poland and the United States.
たぬき訳「ビットフィネックスは詐欺の被害者です」(赤字直訳)
う〜む、たぬ。なんか苦しい感じたぬね。
事件はまだ終わってないたぬ。要チェックたぬ。
価格操作疑惑
さらにTetherはビットコインの価格操作にも関与していることが疑われていて、そのことについてはテキサス大学教授2人による論文まででているたぬ。
SSRN https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3195066
Using algorithms to analyze the blockchain data, we find that purchases with Tether are timed following market downturns and result in sizable increases in Bitcoin prices.
たぬき訳「低迷時にテザーで買われてめっちゃビットコイン価格がぶち上がることがデータから分析できたよ」
この記事の最後に書くたぬけど、テザーがビットコイン価格変動を仕掛けているっていうのは実証レベルではともかく、カンの鋭いトレーダーの実感には適っているたぬ。
にも関わらずテザーの取引高はパネエ
以上のようにテザーは色々と問題があるたぬ。
にも関わらず、テザーの取引高はビットコインを上回るほどたぬ。
ブルームバーグ https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-02/PYQ6UFT0G1KW01
コインマーケットキャップ・ドット・コムのデータは、日々および月間の取引高が最も高い仮想通貨がテザーであることを示している。テザーの取引高は4月に初めてビットコインを超え、8月前半以降の1日当たりの取引高は約210億ドル(約2兆2650億円)と、一貫してビットコインを上回っている。
確かに、https://coinmarketcap.com/ja/で実際に見てみるとそのようになってるたぬ。
同じくこのサイトでチェックすると、2019年11月現在時価総額も5位たぬ。ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、リップル(XRP)、ビットコインキャッシュ(BCH)、そしてテザー(USDT)という順位になってるたぬ。なんとテザーがライトコイン(LEO)やネム(NEM)など、有名なアルトコインを上回っているたぬ。
なんでそんなに使われてるの?
問題が山積みなのになんでそんなに使われているんかな、たぬ。
あくまで推測たぬけど、その理由はいくつか考えられるたぬ。
推測(1) 裏付けのないテザーを刷りまくってビットコインなどを買うために使ってるから。
今まで見てきたように、テザーはドルの裏付け以上に刷られているたぬ。
さらに、もし例の論文が正しければテザー建てでビットコインを仕掛け的に買っているらしいたぬ。
これらから察するに、どうもテザー一味が本来あまり価値のないテザー(USDT)を作って使ってビットコインや他の仮想通貨を買うことで利益を出しているんじゃないかっていう感じが界隈に漂っているたぬ。
推測(2) 中国では法定通貨で仮想通貨取引ができないから、中国のトレーダーが法定通貨のペッグ通貨を使うことで代替してる。
テザーはその仕組みの信頼性が揺らいでるとはいえ、一応今のところは、大体1USDT=1USDで取引可能たぬ。
だからテザーを使うことによって事実上ドル建てでビットコインを取引することの代わりにしているんじゃないか、という説があるたぬ。
テザー(USDT)とビットコイン(BTC)価格の相関性
そんなわけで、テザーがビットコインに対し影響力を持ってるってことはまず間違いないと思っていいんじゃないか?たぬ。
具体的には、特に以下のようなときに価格への影響が見やすいたぬ。これらを抑えておくと知らないのとじゃ全然話が違うたぬ。
以下の画像のチャートは件のBitfinexのBTC/USD価格たぬ。相関関係をチェックしてくたぬ。
(1)時価総額上昇(新規発行)→ビットコイン価格急騰
今年の春から夏にかけてのBTC価格上昇は非常にテザー時価総額との相関性が見やすいたぬね。
テザー時価総額の表示の仕方
Trading Viewで「比較」から「USDT MARKET CAP 」と打てばこうやって重ねられるたぬ。
テザーは最も重要な先行指標の一つたぬ。「の一つ」っていうか、端的にこれが最も重要だと思うたぬ。必ずチェックしておくべきたぬ。
(2)時価総額減少(バーン)→ビットコイン価格急落
バーン(burn)ていうのは仮想通貨が消滅することたぬ。
テザーにおけるバーン(burn)っていうのは、基本的には「出金した」ってことたぬ。
テザーは一応、ドルを預け入れられた時にその分のUSDTを発行して、それをドルに戻したときに、その分のUSDTが市場からバーンされるようになってるたぬ。そうやってUSDとUSDTの「1対1」交換を維持する仕組みになっているたぬ。
・・・「一応」たぬ。さっきも見たように、どうも完全にそういうわけじゃないみたいたぬから。
もうテザーバーンでBTCプライスがげっそり落ちてることが画像からわかるたぬ。
(3) テザー建てポジション
テザー建てポジションについては日を改めてもう少し詳しい話をしたいたぬ、ここではわかりやすい例を一個だけ紹介するにとどめるたぬ。
前に「BTC記録」のとこで貼った画像を使うたぬ。
ピンクがテザー建てショート(USDTSHORTS)たぬ。
暴落前、非常に高い水準のショートポジションがあった上に、暴落の瞬間だけ更にめちゃくちゃ積まれていることがわかるたぬ。
テザー建てポジションは非常に重要なので、独立に「建玉分析Part2」として書いといたぬき。